【SASE実践】[総括] ネットワークの快適性とセキュリティの一貫性を両立する「主従関係」の引き方
はじめに
ここまでSASE実践編として、
- 通信経路の考え方
- SD-WANとSSEの役割分担
- 拠点エッジの防御
- ZTNAとの住み分け
- PACファイルとの整合性
- 障害時の考え方
などを紹介してきました。
一見すると個別のテーマを扱っているように見えますが、実はすべて同じテーマにつながっています。
それが、「ネットワークの快適性」と「セキュリティの一貫性」をどう両立するか ということです。
SASE設計で起きる悩みの正体
SASE導入を検討すると、多くの企業が次のような悩みに直面します。
- M365は直接インターネットに出したい
- でもセキュリティチェックは統一したい
- VPNは無くしたい
- でも社内システムには安全に接続したい
- 通信を最適化したい
- でも運用は複雑にしたくない
どれも正しい要求です。
しかし、すべてを同時に満たそうとすると設計が複雑になり、結果として運用負荷や障害リスクが増えてしまいます。
重要なのは「主従関係」を決めること
そこで重要になるのが、何を主役にして、何を補助役にするのか
という考え方です。
例えばインターネット向け通信であれば、
- SD-WANは通信を最適な経路へ運ぶ
- SSEはセキュリティチェックを行う
という役割分担が基本になります。
逆に、両方で同じことを実施しようとすると、
- ポリシー重複
- トラブル切り分け困難
- 運用負荷増大
といった問題が発生しやすくなります。
実践編で伝えてきたこと
これまでの記事を振り返ると、テーマは違っても共通する考え方がありました。
セキュリティチェックは誰が担当するのか
SD-WANにもセキュリティ機能があります。
SSEにもセキュリティ機能があります。
だからこそ、「どちらを主担当にするのか」を明確にする必要があります。
通信経路は誰が制御するのか
LBOを行うのか。
PACファイルを利用するのか。
SSEへ転送するのか。
これらも、「誰が経路制御の主導権を持つのか」を決めることで整理できます。
障害時に何を優先するのか
SSE障害。
DNS障害。
PoP障害。
実際の運用では様々な障害が発生します。その際も、
- セキュリティを優先するのか
- 業務継続を優先するのか
という判断が必要になります。
つまり障害設計もまた、主従関係の設計と言えます。
SASEは製品選定よりも設計思想が重要
実際のプロジェクトでは、
- Cisco
- Fortinet
- Palo Alto Networks
- Zscaler
- Netskope
- Prisma Access
など様々な製品が登場します。しかし製品が変わっても本質は変わりません。
重要なのは、「何をどこで実施するのか」を明確にすることです。
この設計思想が定まっていない状態で製品選定だけを進めると、後から運用負荷や設計の矛盾が発生しやすくなります。
おわりに
今回紹介してきた内容は、SASE実践における設計・運用の考え方の一例です。
もちろん、これだけでSASE設計の全てを網羅できるわけではありません。
実際の現場では、
- 製品ごとの実装差異
- 企業ごとの運用要件
- 既存ネットワークとの整合性
- 認証基盤との連携
- 障害時の運用方針
など、さらに多くの検討事項が存在します。
今後もSASEナビでは、こうした実践的なテーマを継続的に取り上げていく予定です。
特にこれからは、
Cisco Catalyst SD-WANやZscalerをはじめとしたソリューション固有の設定・設計ノウハウにも踏み込みながら、現場で役立つ情報を発信していきたいと思います。
SASEは単なる製品導入ではなく、ネットワークとセキュリティの役割を再整理する取り組みです。
その中で、「ネットワークの快適性」と「セキュリティの一貫性」をどう両立するのか。
これからもその答えを現場目線で考えていきたいと思います。


