1. SASE(SD-WAN × SSE)

【SASE実践】[設計] [通信経路]拠点間通信 vs ZTNA:すべてをZTNAに任せるべきか

buffoon

はじめに

「SSEやZTNAを導入すればもう高いWAN回線やSD-WANは不要で、全拠点をインターネット+ZTNAの構成にできるのでは?」というベンダーの提案に悩んでいませんか?

  • 結論から言うと、「前提条件付きで、拠点と拠点をつなぐネットワーク機能(SD-WAN等)は残すべき」です。

すべてをZTNAに任せる「フルZTNA」ではなく、社内と社外で使い分ける「ハイブリッド設計」こそが、日本企業(JTC)の現実的な最適解である理由を解説します。

なぜ「すべてZTNA」ではダメなのか?

①プロトコル挙動や遅延で破綻する「オンプレ資産」の存在

ZTNAは基本的に「クライアント(端末)からWebアプリ(HTTPS等)」への通信を想定して作られています。
※一昔はUDP通信に対応していないソリューションも存在しました。

拠点にあるActive Directory(AD)の認証同期大容量のファイルサーバー(SMBプロトコル)オンプレのレガシー業務システムは、ZTNA(コネクタ)を挟むことでプロトコルの挙動が不安定になったり、遅延によって通信が破綻するリスクがあります。これらは従来の拠点間通信(L3/L2レベルのルーティング)に任せる方が圧倒的に安定します。

②ZTNAエージェントが入れられない「サーバー間通信」の壁

ZTNA(ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス)の基本思想は、あくまで「PCなどの端末(ユーザー)」から「アプリ」への通信を制御することです。

しかし実際のエンタープライズでは環境が違う(同じLAN内にいない)「サーバーからサーバーへの通信(Server-to-Server)」が頻繁に発生します。ここに大きな壁があります。

  • エージェントが入れられない: そもそも社内の古いOSのサーバーや、アプライアンス機器にはZTNAのエージェントをインストールできません。
  • サーバー起点の通信が苦手: ZTNAは「クライアント側からセッションを張る(アウトバウンド)」ことで安全性を担保する仕組みが多いため、サーバー側が起点となって別のサーバーへデータをプッシュするような通信経路の制御は、仕様上サポートしていないか、設定が極めて複雑になります。
補足:サーバー間通信をカバーする「SSEソリューション」の理想と現実

一応、こうしたサーバー起点(Server-to-Server)の通信をフォローするためのSSE/ZTNAソリューションや専用の構成も存在はします。これらを導入すれば非機能要件の観点、例えば「マイクロセグメンテーション(サーバー間の通信を極限まで細かく制御して、万が一のウイルス感染時の横展開を防ぐ)」といった高度なセキュリティ制御が可能になります。

しかし、現場の感覚から言うと、そこまで普及していないのが現実の印象です。

「単に通信を通す(ルーティングする)」という機能要件の面においては、既存のネットワーク(SD-WAN等)で制御する方が圧倒的にシンプルで、コストパフォーマンスも高いからです。運用を複雑にしてまでサーバー間通信をすべてSSEに委ねるメリット(費用対効果)が見出せないケースがほとんどです。

結果として、これらのサーバー間通信を成立させるためにも、拠点間を結ぶネットワークインフラは残さざるを得ないというのが、リアルな結論になります。

③コネクタ・基盤費用など「隠れたコストとボトルネック」

ZTNAで拠点通信を賄おうとすると、拠点側の通信を集約する「コネクタ」やIPsecルータがボトルネックになります。

  • スケールアップで回避は可能ですが、製品によっては「スループットに応じたライセンス費用」が跳ね上がります。
  • さらにコネクタを動作させるためのオンプレの仮想化基盤(VM等)の維持費や物理筐体のコストを考えると「安価なインターネット回線+ZTNA」にしたつもりがかえってコスト高になる罠があります。

例外:拠点間ネットワークを完全に廃止できる「前提条件」

もちろん、完全に拠点間ネットワークを無くせるケース(フルZTNAがハマる環境)もあります。

  • 社内アプリが完全にパブリッククラウド(AWS/Azure等)にシフト完了している。
  • アプリ間の連携(サーバー間通信)もパブリッククラウド内で完結している。

この状態であれば、拠点は「ただのインターネット回線」だけでよく、クライアントー社内アプリ間をZTNAで繋ぐだけで綺麗に成立します。

JTC(伝統的日本企業)における現実的な解

しかし、一般的な日本企業(JTC)で上記の「完全クラウドシフト」は容易ではありません。

なぜなら、拠点にはまだ以下の機能が根強く残っているからです。

  • 複合機やオフィス内のIP電話
  • 現場に必要な基盤系サーバー(DHCP、RADIUS、ローカルDNSなど)

これらがある以上、拠点という概念を急になくすことは不可能です。

したがって、「既存のインフラ資産(AD・ファイルサーバー・複合機等)を維持するためのSD-WAN」「クラウドアプリやリモートワークのためのZTNA」を賢く使い分けるハイブリッド設計こそが、トラブルを起こさない現実的な解となります。

まとめ

  • 「拠点間通信の全廃」は、ベンダーの絵に描いた餅になりがち。
  • 現場のプロトコル挙動、サーバー間通信、隠れたライセンスコストを見極めること。

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自称SASEエンジニアです。 2児の父親をやりながら、日々エンタープライズ向けの次世代ネットワークインフラと格闘しています。一日一投稿を目標に投稿頑張りますので、是非読んでください!
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